近年、教育現場で注目されている「STAM教育」。「聞いたことはあるけど、詳しくはわからない」という方も多いのではないでしょうか?STAM教育は、目まぐるしく変化する社会に柔軟に対応し、活躍できる人材を育てるために生まれました。
この記事では、そんなSTAM教育の特徴や注目される背景など、基本的な知識をわかりやすく解説します。
STAM教育とは
STAM教育とは、Science(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Mathematics(数学)の4つの分野を組み合わせた教育アプローチのことです。また、Arts(芸術)を組み合わせてSTEAM教育と表現することもあります。
以下に詳しい特徴をご紹介します。
分野にとらわれない統合的な学び
STEAM教育の5つの分野は、具体的に以下のような内容を指します。
- Science(科学):身の回りの世界に対する疑問を発見し、考える学問
- Technology(技術):さまざまな知識を生活に役立たせる方法や、便利な道具、装置、技術のこと
- Engineering(工学):ものごとの構造を調べたり、より良い製品やシステムを生み出したりする学問
- Arts(芸術):アートやデザイン、リベラルアーツを指し、世界を見る新たな視点を生み出すもの
- Mathematics(数学):数・量・図形などについての学問を指し、日々の生活やものづくり、問題解決などにも必要不可欠なもの
従来の教育では、これらを分野や科目ごとに分けて学んでいました。しかしSTEAM教育では、分野にとらわれず統合的に学びます。ロボットを作る課題を例に分類してみましょう。
- 科学の知識を使ってロボットの動きを理解し(S)
- プログラミングで制御し(T)
- 設計図を描いて実際に組み立て(E)
- 美しいデザインに仕上げ(A)
- 計算を使って精密に動作させる(M)
このように、複数の分野を組み合わせながら学びます。
これにより、自ら問題を発見する力や、創造力、問題解決能力、論理的思考などが育つことを目指しているのです。
文部科学省ではこれを、「各教科での学習を実社会での課題発見と解決に生かしていくための教科横断的な教育」と解説します。
受動的な学びから能動的な学びへ
STEM教育と従来の教育の大きな違いとして、「自ら学ぶ」という点が挙げられます。従来の教育は、知識を先生に教えてもらう受動的な学びが中心で、正しい答えを導き出すスキルを身につけることが、学習の主な目的でした。
一方STEM教育では、子どもの好奇心を学びの原動力とし、能動的な学びを促します。プロジェクト型の学びをベースに、子どもは自分が関心を持つ事柄について問いを立て、解決策を考えます。答えや知識を与えられるのではなく、自分で考えて解決策を導き出さなければなりません。決まった答えがあるわけではないので、創造性が育まれます。
また、座学だけでなく、ロボット制作、プログラミング、3Dプリンターを使ったものづくり、デザインワークショップなど、体験型の学習が多いのも特徴です。このように知識を得ることだけでなく、創造的な学びも循環して行うことで、学びがより深まると考えられています。
色々な考えに触れ、視野を広げる
STEM教育で扱う問題には、明確な正解がありません。そのため一人で考えて答えを出すのではなく、意見を出し合いながら答えを探ることが多いです。このプロセスを通じ、さまざまな価値観の人と触れ合い、視野を広げることができます。他人にリスペクトを持てるようになり、自分とは価値観の違った意見を受け入れられるようにもなるでしょう。
自分だけの価値観にとらわれず、広い視点で考えられるようになることで、より自由な発想が生まれます。新学習指導要領では、学校内だけでなく、保護者や地域、企業などと幅広く協力する学びを目指しています。
STEAM教育が注目される理由
STEAM教育が世界的に注目を集めています。日本人は特に、「A」の分野が苦手だとされているため、一層STEAM教育への期待が高まっています。なぜ今STEAM教育が注目されているのでしょうか。
Society 5.0に備えるため
Society 5.0とは、日本政府が提唱する未来の社会の姿のことです。具体的にいうと、IoTやAIなどの先端技術をフル活用し、経済発展と社会課題の解決の両立を目指す社会を指します。
こうした未来では、誰もが科学技術を使いこなすことが欠かせません。特に少子高齢化により労働力が乏しくなるであろう日本では、テクノロジーの力が必要不可欠です。現在の子どもたちが今後の社会を生き抜くためには、技術力や論理的思考力を磨き、科学技術を駆使して創造的な方法で問題を解決する力を育てる必要があります。
創造力を促すため
これからの時代、AIやロボットにはできない人間ならではの創造的な思考が求められています。実際に、世界ではアートやデザインを重視する傾向が強まっています。例えばアップル社のiphoneは、アートとデザインの融合で生まれた革新的な製品の良い例です。
またAIや自動化技術の進化により、単純な知識や作業は機械に代替される時代になりつつあります。そのため次世代の人材には、より一層「創造力」「問題解決能力」「柔軟な思考」が求められるのです。そこで、より実践的で革新的な教育が可能な、STEAM教育に注目が集まるようになりました。
予測不能な社会に対応するため
2015年、野村総研は「10〜20年後には日本人が従事する仕事の約半分がAIなどで代替え可能となる」と試算しました。技術の発展により消える仕事があるのは、今に始まったことではありません。例えば昔は、電話の回線を繋ぐ電話交換手という仕事がありましたが、技術の進化により必要なくなりました。
近年の生成AIの革新・普及などを見ていると、子どもたちが大人になる頃には、今ある職業が消滅している可能性は十分にあります。科学技術の進歩は年々早くなっており、社会が今後どのようになっていくのか予測不可能です。
そういった未来で生き残るためには、柔軟な発想と変化を乗り切るスキルが必要となります。従来型の教育だけでなくSTEM教育を取り入れることにより、自ら考え行動する力が身につくことが期待されているのです。
まとめ
STEM教育では、「論理的に考え、問題を解決する力」や「創造力や感性を活かして、新しいアイデアを生み出す力」も育ててくれます。これからの時代、理系の知識だけでなく、創造力や感性を活かして新しいものを生み出す力が求められるでしょう。
STEM教育は、そういった力を育てるための重要な手段です。保護者の方もSTEM教育について知っておくことで、子どもの学びをより上手にサポートできるかもしれません。
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